金木犀

帰り道
暗がりの中で
不意に包まれる

懐かしい香りが
記憶を刺激して
目の前に現れるのは
もう一人の僕

月明かりに照らされた
その背中は
無防備に未来を信じている

「ねえ、すこしは成長できたかい?」

振り返った
その目が問いかける

僕はなんて答えればいいんだろう。

変わらぬ金木犀の香りと―


十八の夏 (双葉文庫)

十八の夏 (双葉文庫)

ささやかな奇跡、
きっと。